薬局の経営に大きく影響を与える調剤報酬の改定が2024年にあります。
令和6年は医療に加えて介護報酬も改定され、改定の内容が気になる薬剤師や事務長は多いのではないでしょうか。
先日の財務省資料のあと、令和5年12月19日に厚労省から令和6年介護報酬改定に関する審議報告についてが公開され、令和6年1月22日に第239回社会保障審議会介護給付費分科会が行われ資料が公開されました。
※この記事は2023年12月25日時点の情報にて作成後、2024年1月22日の情報を加味して更新しています。
その中で薬剤師が行う居宅療養管理指導について適切な薬物療法を提供する観点から大きく4つの見直しが行われます。
調剤の令和6年改定の方向性が気になる方はぜひ令和5年11/29情報!調剤報酬の動向が気になる薬剤師と事務長へ”調剤についてその3”を読んでみるをご覧ください。訪問医療の現場で利用しやすいノートPCの解説もしています「訪問医療を行う医師と薬剤師にノートPCのLIFEBOOKーUHシリーズを勧める理由4選」
目次
- 1 麻薬の注射と点滴だけではなく注入ポンプにも対応した【医療用麻薬持続注射療法加算250単位/回】が新設
- 2 輸液セットはどこが負担するの問題が解決、介護にも【在宅中心静脈栄養法加算150単位/回】が新設
- 3 【居宅療養管理指導の算定回数の上限が月8回へ】対象が末期がん患者から麻薬注射剤の投与を受けている患者に拡大
- 4 老人保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算Ⅰについての要件に薬剤師が加わる
- 5 【オンライン居宅療養管理指導46単位】要件が緩和され算定可能な回数が4回に増えます
- 6 まとめ:令和4年と令和6年の居宅療養管理指導(オンライン)の算定要件比較表
- 7 災害時・感染症拡大時の業務計画書未策定の場合に減算のペナルティあり
- 8 診療報酬改定に対応できない職場に留まる必要は無い
麻薬の注射と点滴だけではなく注入ポンプにも対応した【医療用麻薬持続注射療法加算250単位/回】が新設
もともと末期がん患者に対する報酬は他の報酬より手厚くつけられており、算定回数が月8回まで、麻薬注射剤の加算がある状態となっています。
調剤報酬にある在宅患者医療用麻薬持続注射療法加算と同様に、介護報酬を合わせた変更となります。
1回につき250単位となるため、最大8回で算定した場合はなんと2000単位となります。
○ 在宅で医療用麻薬持続注射療法を行っている利用者に対して、その投与及び保管の状況、副作用の有無等について当該利用者又はその家族等に確認し、必要な薬学的管理指導を行った場合に、1回につき250単位を所定単位数に加算する。
患者の状態に応じた在宅薬学管理の推進
※ 疼痛緩和のために厚生労働大臣が定める特別な薬剤の投薬が行われている利用者に対して、必要な薬学的管理指導を行っている場合に算定する加算(100単位)との併算定は不可。
○ 麻薬及び向精神薬取締法第3条の規定による麻薬小売業者の免許を受けていること。
○ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第39条第1項の規定による高度管理医療機器の販売業の許可を受けていること。
特に患者自身が自己調節できるPCA(Patient Controlled Analgesia)ポンプは患者と医療者双方の負担を大きく減らすメリットがあるものとなり、積極的に採用をしていきたいものとなります。
PCAの中でも医療者の負担が少ない「クーデックエイミーPCAポンプ」があるので、高度管理医療機器の取り扱いができる薬局は採用を検討してみてはいかがでしょう。参考:大研医器株式会社
現状の制度において調剤薬局は「特定保険医療材料008 携帯型ディスポーザブル注入ポンプ (4)特殊型」としての3240円しか請求ができません。
納入価格は薬局にもよりますが大抵数百円上回るため、医科と数量の調整をした処方設計をする必要がある状況が解消されそうです。
輸液セットはどこが負担するの問題が解決、介護にも【在宅中心静脈栄養法加算150単位/回】が新設
点滴は単一の処方であれば良いですが、中心静脈となるとそれに付随する点滴バッグが必要となります。
CVポートも輸液セットも原料は樹脂ですが、医療水準の不良品率をクリアしなおかつ無菌的な製品となるため意外と高額なものとなります。
調剤報酬にある在宅中心静脈栄養法加算と同様に、介護報酬を合わせた変更となります。
○ 在宅中心静脈栄養法を行っている利用者に対して、その投与及び保管の状況、配合変化の有無について確認し、必要な薬学的管理指導を行った場合に、1回につき150単位を所定単位数に加算する。
患者の状態に応じた在宅薬学管理の推進
○ 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第39条第1項の規定による高度管理医療機器の販売業の許可を受けている又は同法第39条の3第1項の規定による管理医療機器の販売業の届出を行っていること。
医療保険の調剤報酬である在宅中心静脈栄養法は、次の要件があります。
- 在宅中心静脈栄養法を行っている患者に対して、患者の状態、投与及び保管の状況、配合変化の有無について確認し、必要な薬学的管理及び指導を行い、処方医に情報提供をする。
- 2種以上の注射薬が同時に投与される場合は、必要に応じて、処方医以外の医療関係職種に対しても、当該患者が使用する注射剤に係る配合変化に関する留意点、輸液バッグの遮光の必要性等について情報提供する。
介護保険の算定要件には明記はされていませんが、遮光の必要性なども「投与および保管の状況」として当然考慮されているものと解釈した方が無難です。
【居宅療養管理指導の算定回数の上限が月8回へ】対象が末期がん患者から麻薬注射剤の投与を受けている患者に拡大
調剤報酬にて設定されていた末期がんと中心静脈栄養を受けている場合と同様に、居宅療養管理指導の算定回数の上限が月8回となる対象が、麻薬注射剤の投与を受けている患者に拡大されます。
事前の審議では心不全や呼吸器不全とされていましたが、疾患の文言は無く注射による麻薬の投与がなされていれば上限が8回となる対象となる改定となります。
医療保険と介護保険で制度が異なる状況が解消された内容となります。
どちらかというと4回を超えてサービス訪問をしていた薬剤師の行動を評価した報酬ではないでしょうか。
医療従事者の賃金向上が求められていますが、算定できていなかった分の評価報酬が今回の改定を機に見直された結果となります。
心不全や呼吸不全で麻薬注射剤を使用する患者は頻回な訪問が必要となることから、末期の悪性腫瘍の者及び中心静脈栄養を受けている者と同様に、週に2回かつ1月に8回を限度として算定することを可能とする。
令和6年介護報酬改定に関する審議報告について
こちらの「心不全や呼吸不全」の文言が含まれた議論から、疾患の限定が無い文言へとなりました。
在宅の利用者であって通院が困難なものに対して、薬局の薬剤師が、医師又は歯科医師の指示に基づき、当該薬剤師が策定した薬学的管理指導計画に基づき、当該利用者を訪問し、薬学的な管理指導を行い、介護支援専門員に対する居宅サービス計画の策定等に必要な情報提供を行った場合に、単一建物居住者の人数に従い、1月に4回を限度として、所定単位数を算定する。ただし、薬局の薬剤師にあっては、以下の者に対して、当該利用者を訪問し、薬学的な管理指導等を行った場合は、1週に2回、かつ、1月に8回を限度として、所定単位数を算定する。
令和6年度介護報酬改定における改定事項について
イ 末期の悪性腫瘍の者
ロ 中心静脈栄養を受けている者
ハ 注射による麻薬の投与を受けている者
老人保健施設のかかりつけ医連携薬剤調整加算Ⅰについての要件に薬剤師が加わる
老人保健施設側が算定できる加算の一つに「かかりつけ医連携薬剤調整加算Ⅰ」があります。
この内容に薬剤師が関係する要件が加わることで、薬局が相談を受けることになりそうです。
処方を変更する際の留意事項を医師、薬剤師及び看護師等の多職種で共有し、処方変更に伴う病状の悪化や新たな副作用の有無について、多職種で確認し、必要に応じて総合的に評価を行うこと。
かかりつけ医連携薬剤調整加算の見直し①
処方変更による影響が無いかを確認して評価することが求められます。
薬局側と施設側で対応を相談しておき、取り決めておくことが良いでしょう。
薬剤師の視点から見逃されやすい副作用の情報を共有しておく。同じ成分でも財形を変更して副作用を回避する。といった活動ができればより貢献できる場面となるでしょう。
以下は老人保健施設側の要件となります。
かかりつけ医連携薬剤調整加算(Ⅰ)について、施設におけるポリファーマシー解消の取組を推進する観点から、入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合に加え、施設において薬剤を評価・調整した場合を評価する新たな区分を設ける。その上で、入所前の主治医と連携して薬剤を評価・調整した場合の区分を高く評価する。また、新たに以下の要件を設ける。
令和6年介護報酬改定に関する審議報告について
処方を変更する際の留意事項を医師、薬剤師及び看護師等の多職種で共有し、処方変更に伴う病状の悪化や新たな副作用の有無について、多職種で確認し、必要に応じて総合的に評価を行うこと。
入所前に6種類以上の内服薬が処方されている方を対象とすること。
入所者やその家族に対して、処方変更に伴う注意事項の説明やポリファーマシーに関する一般的な注意の啓発を行うこと。
【オンライン居宅療養管理指導46単位】要件が緩和され算定可能な回数が4回に増えます
令和4年従来の居宅療養管理指導のオンライン服薬指導(情報通信機器を用いた服薬指導)を行う場合は45単位となり、次の制限がありました。
- 1月に1回を限度として所定単位数を算定する。
- 在宅時医学総合管理料(医科診療報酬点数表の区分番号C002)に規定する訪問診療の実施に伴い、処方箋が交付された利用者
- 居宅療養管理指導費が月1回算定されている利用者
その要件が緩和され、単位数も1増加します。
オンライン服薬指導に係る医薬品医療機器等法のルールの見直しを踏まえ、薬剤師による情報通信機器を用いた居宅療養管理指導について、以下の見直しを行う。初回から情報通信機器を用いた居宅療養管理指導の算定を可能とする。訪問診療において交付された処方箋以外の処方箋に係る情報通信機器を用いた居宅療養管理指導についても算定可能とする。
令和6年介護報酬改定に関する審議報告について
まとめ:令和4年と令和6年の居宅療養管理指導(オンライン)の算定要件比較表
まとめると次のようになります。
令和4年の居宅療養管理指導(オンライン) | 令和6年改定以降の居宅療養管理指導(オンライン) |
45単位 | 46単位 |
初回は不可 | 初回から可能 |
月1回まで | 月4回(上限)まで可となる |
訪問診療において交付された処方箋のみが対象 | 訪問診療において交付された処方箋以外も対象にできる |
災害時・感染症拡大時の業務計画書未策定の場合に減算のペナルティあり
業務継続計画を未策定の場合、居宅療養管理指導が3%減算されるペナルティがあります。
感染症で人員が少なくなった場合や、災害時の対応をあらかじめ見直しておきましょう。
よろしければ災害関連の記事をご参考にしてください。
他にも診療報酬改定に関する記事を書いていますのでぜひご覧ください。
令和5年12/11情報!令和6年度診療報酬改定の基本方針を読み解く
診療報酬改定に対応できない職場に留まる必要は無い
現在勤務している薬局は、令和4年の改定の際に地域支援体制加算の算定に向けた目標設定はしましたか。
情報提供書の作成や在宅医療の患者を受け入れる体制の準備、タスクシフトを考慮した業務フローの見直しがそれにあたります。
これらの内容は店舗のメンバーが力を合わせて行う必要があり、自分だけで行うには限界があったはずです。
協力や理解が得られなかった場合、自分だけで薬局の改善に取り組むよりは職場を変えた方が早いです。
転職サイトに登録し、自分が取り組んできた改善についてをエージェントに話してみましょう。
調剤報酬改定に対する取り組みの負担を一人で抱える必要はありません。
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