令和6年診療報酬改定の情報となる、個別改定項目についてが公開されました。
その中で、地域支援体制加算の算定要件が気になる薬局関係者は多いのではないでしょうか。
地域支援体制加算の算定に向けてクリアしなければならない実績要件が、店舗運営の目標に設定されることも多いはずです。
厳しくなる一方であった地域支援体制加算の算定要件ですが、今回の改定の実績要件について緩和と捉えられています。
一方で、施設要件に麻薬小売り免許、在宅関連薬学管理の件数直近一年24件以上、後発品使用率に変更があります。
そこで、実績要件の内容の緩和についてと、体制に関する要件の注意点を神奈川・京都の個別指導の相談にも対応してきた筆者とともに確認していきましょう。
目次
【令和6年度版】地域支援体制加算1の点数がダウン
令和6年診療報酬改定においては、地域支援体制加算の算定要件の難易度が下がりました。
令和4年の改定にて苦労された薬局が多い経緯から、令和6年は賃金上昇を考慮した改定内容となるためです。
調剤基本料1を算定している薬局は、地域支援体制加算1または地域支援体制加算2が算定できる可能性があります。
地域支援体制加算1と地域支援体制加算2には以下の10個の実績要件が関係します。
※回数は直近1年間の処方箋受付1万回あたりとなります。
- 薬剤調整料の時間外夜間休日の合計が40回以上
- 薬剤調整料の麻薬関連加算が1回以上
- 重複相互・在宅患者重複相互の合計が20回以上
- かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料20回以上
- 外来服薬支援料1の算定回数が1回以上
- 服用薬剤調整支援料1及び2の算定回数の合計が1回以上
- 単一建物の居宅・在宅計24回以上
- 服薬情報等提供料の算定回数30回※以前は12回のため増加
- 小児特定加算の算定回数の合計が1回以上
- 認定薬剤師が地域の多職種と連携する会議に1回以上出席※以前は薬局あたり1回のため実質増加
地域支援体制加算1を算定する場合、4のかかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料を20回算定する必要があります。
それに加えて、さらに他9つの中から3つの実績要件を満たす必要があります。
参考※地域支援体制加算の見直し
令和6年診療報酬改定から地域支援体制加算1は32点となります。
地域支援体制加算2は地域支援体制加算1の10の実績要件のうち8項目以上
地域支援体制加算2は40点となり、従来より7点減少しています。
地域支援体制加算2は10ある実績要件のうち、8つをクリアする必要があります。
4のかかりつけ薬剤師が関わる実績要件は必須ではありません。
小児特定加算や麻薬の加算に関しては患者がいなければ算定が難しいことも考えられます。
また、かかりつけ薬剤師は継続勤務が重要となるため、雇用環境の改善も重要なポイントとなりそうです。
【令和6年度版】地域支援体制加算3と地域支援体制加算4の要件
調剤基本料1を算定していない薬局は地域支援体制加算3または地域支援体制加算4を算定できる可能性があります。
チェーン薬局が主に該当する地域支援体制加算3と4についての実績要件は地域支援体制加算1のものとは数値が異なります。
※こちらも回数は同様に直近1年間の処方箋受付1万回あたりとなります。
地域支援体制加算3は10点となり、従来より7点減少しています。
地域支援体制加算3の場合は、4のかかりつけ薬剤師に関する要件と7の療養管理指導が必須要件となります。
加えてあと一つ要件を満たす必要があります。
- 薬剤調整料の時間外夜間休日の合計が400回以上
- 薬剤調整料の麻薬関連加算が10回以上
- 重複相互・在宅患者重複相互の合計が40回以上
- かかりつけ薬剤師指導料またはかかりつけ薬剤師包括管理料 40回以上
- 外来服薬支援料1の算定回数が12回以上
- 服用薬剤調整支援料1及び2の算定回数の合計が1回以上
- 単一建物の居宅・在宅計24回以上
- 服薬情報等提供料の算定回数60回
- 小児特定加算の算定回数の合計が1回以上
- 認定薬剤師が地域の多職種と連携する会議に5回以上出席※以前は薬局あたり5回のため実質増加
【地域支援体制加算4】の算定要件
地域支援体制加算4は32点となり、従来より7点減少しています。
地域支援体制加算3の10の実績要件のうち、8つを満たす必要があります。
4のかかりつけ薬剤師に関する要件と7の訪問医療についての要件が必須から外れます。
令和4年の実績要件がトレースされていることから、従来から取り組んでいる場合は算定要件を満たすことができるのではないでしょうか。
令和4年の要件はこちらの記事を参考にしてみてください。
施設要件の注意点
施設要件は従来通りの内容もあれば、変更となる点があります。
地域における医薬品等の供給拠点としての体制として以下を満たすこと。
ア 保険調剤に係る医薬品として1200品目以上の医薬品を備蓄していること。
イ 当該薬局の存する地域の保険医療機関又は保険薬局(同一グループの保険薬局を除く。)に対して在庫状況の共有、医薬品の融通などを行っていること。
ウ 医療材料及び衛生材料を供給できる体制を有していること。また、当該患者に在宅患者訪問薬剤管理指導を行っている保険薬局に対し保険医療機関から衛生材料の提供を指示された場合は、原則として衛生材料を患者に供給すること。なお、当該衛生材料の費用は、当該保険医療機関に請求することとし、その価格は保険薬局の購入価格を踏まえ、保険医療機関と保険薬局との相互の合議に委ねるものとする。
エ 麻薬及び向精神薬取締法(昭和28年法律第14号)第3条の規定による麻薬小売業者の免許を取得し、必要な指導を行うことができること。
オ 処方箋集中率が85%を超える場合にあっては、当該保険薬局において調剤した後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品について、規格単位数量に占める後発医薬品の規格単位数量の割合が当該加算の施設基準に係る届出時の直近3月間の実績として70%以上であること。この場合において、処方箋集中率が85%を超えるか否かの取扱いについては、「第88調剤基本料」の「2 調剤基本料の施設基準に関する留意点」に準じて行う。
カ 次に掲げる情報(当該保険薬局において取り扱う医薬品に係るものに限る。)を随時提供できる体制にあること。
個別改定項目について1
(イ) 一般名
(ロ) 剤形
(ハ) 規格
(ニ) 内服薬にあっては製剤の特徴(普通製剤、腸溶性製剤、徐放性製剤等)
(ホ) 緊急安全性情報、安全性速報
(ヘ) 医薬品・医療機器等安全性情報
(ト) 医薬品・医療機器等の回収情報
他社とも在庫の融通をしているか(分譲・小分け)
地域支援体制加算の実績以外の要件を確認していきましょう。
注目する点はイの医薬品の融通についてです。
在庫がない薬を調達する手段は医薬品卸に限らず、近隣薬局から購入することがあります。
名称は分譲や小分け等がありローカルで様々ですが、一方で、融通をしてくれない会社もあります。
今一度、融通する場合の手数料や消費税の計算方法、インボイス情報の確認をするとよいでしょう。
処方箋集中率が85%の薬局の場合後発品使用率の要件が70%へ上昇
処方箋集中率が85%以上の薬局の場合、後発品使用率50%で要件を満たしていました。
この値が70%へ上昇するため、門前のクリニック医師が先発品の処方を頻繁に行う場合は厳しい条件となりそうです。
令和6年の改定は6月となりますので、経過措置の期間にも注意しましょう。
医薬品情報等の提供体制についての範囲が調剤された医薬品から「取り扱う医薬品」へ変更
調剤しないものを含む文言に変更となりました。
OTC医薬品も対象となり、在庫している医薬品についてが対象となることが考えられます。
しかし、オンラインで情報収集できますので特に注意はいりません。
余計な解釈をして「在庫全種類の添付文書とインタビューフォームを印刷して置いておこう」という人物が現れないように周知しましょう。
スペースの圧迫、効率化やDXに逆行する人物に対して注意が必要となります。
もともと個別指導でDSUについて触れられる西側地域は、念のためDSU等が出た際の薬歴記載と同様にOTC販売記録の記載に注意しておきましょう。
休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制等の対応要件
営業時間、応需体制に関する要件についても変更があります。
休日、夜間を含む薬局における調剤・相談応需体制等の対応
ア 当該保険薬局の開局時間は、平日は1日8時間以上、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、かつ、週45時間以上開局していること。
イ 当該保険薬局のみ又は当該保険薬局を含む近隣の保険薬局と連携して、休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制が整備されていること。休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制とは、単独の保険薬局又は近隣の保険薬局との連携により、患家の求めに応じて休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務(在宅患者に対する調剤並びに薬学的管理及び指導をいう。以下同じ。)に対応できる体制を整備していることをいうものであり、当該業務が自局において速やかに提供できない場合であっても、患者又はその家族等の求めがあれば連携する近隣の保険薬局(以下「連携薬局」という。)を案内すること。また、休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制には、地域医療の確保の観点から、救急医療対策の一環として設けられている輪番制に参加している場合も含まれる。
ウ 当該保険薬局を利用する患者及びその家族等からの相談等に対して、以下の(イ)から(ハ)の体制が整備されていること。
(イ) 夜間、休日を含む時間帯の対応できる体制が整備されていること。また、やむを得ない事由により、患者からの電話等による問い合わせに応じることができなかった場合は、速やかに折り返して連絡することができる体制が整備されていること。
(ロ) 当該保険薬局は、原則として初回の処方箋受付時に(記載事項に変更があった場合はその都度)、当該薬局の保険薬剤師と連絡がとれる連絡先電話番号等、緊急時の注意事項(近隣の保険薬局との連携により休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制を整備している保険薬局は、連携薬局の所在地、名称、連絡先電話番号等を含む。)等について、事前に患者又はその家族等に対して説明の上、文書(これらの事項が薬袋に記載されている場合を含む。)により交付していること。
(ハ) これらの連携薬局及び自局に直接連絡が取れる連絡先電話番号等を当該保険薬局の外側の見えやすい場所に掲示すること。エ 地域の行政機関、保険医療機関、訪問看護ステーション及び福祉関係者等に対して、休日、夜間を含む開局時間外であっても調剤及び在宅業務に対応できる体制(地域医療の確保の観点から、救急医療対策の一環として設けられている輪番制に参加している場合も含む。)に係る周知を自局及び同一グループで十分に対応すること。また、地域の行政機関又は薬剤師会等を通じて十分に行っていること。
個別改定項目について1
24時間から「休日夜間を含む開局時間外」という文言へ
24時間という表現が「休日夜間を含む開局時間外」変更されています。
輪番制に参加している場合も含まれます。
夜間の電話に対応ができなかった際は折り返し
夜間の当番は基本的に少人数で行われます。
そのため、電話が鳴っても対応できないことはあり得ます。
その場合、速やかに折り返し連絡をする体制の整備が記載されました。
一時対応は薬剤師である必要が無いかが気になる記載なので、今後の疑義解釈の公開が気になります。
在宅医療を行うための関係者との連携等の体制に関する要件
実績要件には「単一建物の居宅・在宅計24回以上」がありました。
令和6年改訂により変更がある要件として、単一の建物でなくてもよいですが直近1年間に在宅24回の実績が必要となります。
こちらも薬局の環境によっては厳しい要件となることが考えられます。
在宅医療を行うための関係者との連携等の体制として以下を満たすこと
ア 在宅療養の支援に係る診療所又は病院及び訪問看護ステーションと円滑な連携ができるよう、あらかじめ患家の同意が得られた場合には、訪問薬剤管理指導の結果、当該医療関係職種による当該患者に対する療養上の指導に関する留意点等の必要な情報を関係する診療所又は病院及び訪問看護ステーションの医師又は看護師に文書(電子媒体を含む。)により随時提供していること。
イ 当該地域において、介護支援専門員(ケアマネジャー)、社会福祉士等の他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者と連携すること。また、患者の服薬状況に関する相談を受け付けるなど、地域包括支援センターと必要な連携を行うこと。
ウ 在宅患者に対する薬学的管理及び指導の実績としては、在宅患者訪問薬剤管理指導料(在宅患者オンライン薬剤管理指導料を除く。第92において同じ。)、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料を除く。第92において同じ。)、在宅患者緊急時等共同指導料、居宅療養管理指導費又は介護予防居宅療養管理指導費の算定回数の合計が保険薬局当たりで24回以上であること。当該回数には、在宅協力薬局として連携した場合や同等の業務を行った場合を含めることができる(同一グループ薬局に対して業務を実施した場合を除く。)。なお、「同等の業務」とは、在宅患者訪問薬剤管理指導料で規定される患者1人当たりの同一月内の訪問回数を超えて行った訪問薬剤管理指導業務を含む。この場合において、保険薬局当たりの直近1年間の実績とする。
エ 当該保険薬局は、地方厚生(支)局長に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の届出を行うとともに、処方医から在宅患者訪問薬剤管理指導の指示があった場合に適切な対応ができるよう、例えば、保険薬剤師に在宅患者訪問薬剤管理指導に必要な研修等を受けさせ、薬学的管理指導計画書の様式をあらかじめ備えるなど、在宅患者に対する薬学的管理指導が可能な体制を整備していること。また、患者に対して在宅患者訪問薬剤管理指導を行う旨の情報提供をするために、当該保険薬局の内側及び外側の見えやすい場所に、在宅患者訪問薬剤管理指導を行う薬局であることを掲示し、当該内容を記載した文書を交付すること。
(4) 在宅医療を行うための関係者との連携等の体制として以下を満たすこと。
直近1年間に在宅を24回以上行っているか確認
- 在宅患者訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料
- 在宅患者緊急時等共同指導料
- 居宅療養管理指導費
- 介護予防居宅療養管理指導費
算定回数の合計が保険薬局当たりで24回以上必要となります。
上記の算定が同一月内の訪問回数上限を超えて算定できなかった場合、「同等の業務」として扱うことができ回数に含めることができます。
在宅患者オンライン薬剤管理指導料、在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料は含めることができません。
医療安全に関する取り組みは特に変更なし
(5) 医療安全に関する取組の実施として以下を満たすこと。
ア 医薬品医療機器情報配信サービス(PMDAメディナビ)に登録することにより、常に最新の医薬品緊急安全性情報、安全性速報、医薬品・医療機器等安全性情報等の医薬品情報の収集を行い、保険薬剤師に周知していること。
イ 「薬局機能に関する情報の報告及び公表にあたっての留意点について」(平成29年10月6日付け薬食総発第1006第1号)に基づき、薬局機能情報提供制度において、「プレアボイド事例の把握・収集に関する取組の有無」を「有」として直近一年以内に都道府県に報告していること。
ウ 副作用報告に係る手順書を作成し、報告を実施する体制を有していること。
医療安全に関する取組の実施として以下を満たすこと。
開局した店舗があった場合、必ずPMDAメディナビに登録がなされているかを確認しておけば問題ありません。
そもそも地域支援体制加算の基本的な考え方が賃上げを考慮している
地域支援体制加算の基本的な考え方は以下となります。
地域の医薬品供給拠点としての役割を担い、地域医療に貢献する薬局の整備を進めていくこと、職員の賃上げを実施すること等の観点から、夜間・休日対応を含めた、薬局における体制に係る調剤基本料等の評価を見直す。
個別改定項目について
医療職の職員の賃金上昇は一般企業に追いついておらず、今回の改定はそのための算定要件緩和といえるでしょう。
診療報酬改定に関心を持つ方は優秀な人材です
高齢化を迎え、業務量が増える医療現場の人員を確保するための制度による誘導がなされています。
かかりつけ薬剤を含む施設基準には継続勤務の条件があり、通常は従業員の負担を考慮した待遇がなされるべきです。
しかし、待遇の改善に関しては経営者によるところが大きいため、改定がなされる状況でも待遇が改善しない・労働環境が改善しないという場合は転職を考えましょう。
悩んでいるのであれば、転職サイトに登録するだけで視野が広がります。
どちらかでも大丈夫です。